アンニョンハセヨ、韓国語ずきのゆきーたです。
日本語では「くれる」「あげる」「もらう」と授受関係は3つの動詞で表現しますが、韓国語は【주다】のみで大丈夫。それはすごく楽なのですが、ちょっと気になるのが 【-아/어 주다】 と【 -아/어다 주다】というとても似たような表現があるということ。
例えば、【사 주다】と【사다 주다】。今回は、とってもそっくりなこの2つの表現の違いについて見ていきたいと思います。
【-아/어 주다】 と【 -아/어다 주다】
【 -아/어 주다】とは?
【 -아/어 주다】 は、ご存じの方も多いと思いますが「~してあげる」「~してくれる」「~してもらう」という授受を表す表現です。
【 -아/어다 주다】とは?
【 -아/어 주다】に1文字 【다】 が加わったのが【 -아/어다 주다】。この【다】って一体何なのか?というと、その正体は【-다가】なのです。
【-다가】 は、前と後ろの文をつなぐ働きをしていて「~してから~する」という意味を表してくれます。
이것저것 사다가 집에 갔다.
(あれこれ買って、家に帰った)
そして、この【-다가】は、【가】が省略され【-다】だけで使われることが多いのです。ということで、【 -아/어다 주다】は、実は【-아/어다가 주다】が元の形というわけです。
【-아/어 주다】 と【 -아/어다 주다】の意味の違い
では、 【-아/어 주다】 と【 -아/어다 주다】 意味の違いを見ましょう。
「場所の移動」があるかないかがポイント
2つの意味を日本語で表すなら次のようになります。
【-아/어 주다】 = ~してくれる or あげる or もらう
【-아/어다 주다】= ~して持って来てくれる or あげる or もらう
上で説明したように【-다】 には、「~してから」という意味があるので、【-아/어다 주다】 は「~してから」と言うニュアンスが加わります。
そしてそのニュアンスから広がり「~してから持って来てくれる・あげる・もらう」という意味として使われます。
この「持って来る」という移動のニュアンスがあること、これが 【-아/어다 주다】 のポイントなります。
「買ってくれる」vs.「買って持って来てくれる」
動詞の【사다】を例に詳しく見ていきます。
① 친구가 과자를 사 주었어요.
(友達がお菓子を買ってくれました)
② 친구가 과자를 사다 주었어요.
(友達がお菓子を買って持って来てくれました)
①の文は、「友達が買ってくれた」。場面としては、私も友人も一緒にお店にいて、お菓子の代金を友達が払ってくれたイメージです。
一方②の文は、友達がどこかでお菓子を買って来てくれて、それを、私のところに持って来てくれたというイメージです。「お菓子を買った場所」と「お菓子を私にくれた場所」の間に移動が発生しています。この場所の移動が【 -아/어다 주다】の特徴です。
他にもいろんな例文で違いを感じてみましょう。
動詞【넣다】(入れる)の場合。
① 친구가 사과를 비닐봉치에 넣어 주었어요.
(友達がリンゴをビニール袋に入れてくれました)
② 친구가 사과를 비닐봉치에 넣어다 주었어요.
(友達がリンゴをビニール袋に入れて、持って来てくれました)※どこか別の場所で入れて持って来てくれた
「貸す」「借りる」という意味がある動詞【빌리다】の場合。
① 친구가 책을 빌려 주었어요.
(友達が本を貸してくれました)
② 친구가 책을 빌려다 주었어요.
(友達が本を借りて来てくれました)※友達がどこかで本を借りて、それを持って来てくれた
【김치를 담그다】(キムチを漬ける)という表現の場合。
① 이모가 김치를 담궈 주었어요.
(おばがキムチを漬けてくれました)
② 이모가 김치를 담궈다 주었어요.
(おばがキムチを漬けて、持って来てくれました)※キムチをどこかで漬けて持って来てくれた
【 -아/어다 드리다】 と【-아/어 드리다】も同じ理屈で
【주다】が謙譲語の【드리다】(~して差し上げる)になっても同じ理論で使います。
① 제가 들어 드릴까요?
(私が持って差し上げましょうか)
② 제가 들어다 드릴까요?
(私が持って行って差し上げましょうか or 私が持って来て差し上げましょうか)
慣用的に 【 -아/어다 주다】 が多く使われるケース
先の通り、【-아/어 주다】 と【 -아/어다 주다】 にはニュアンスの違いがあるわけですが、実際の会話で頻繁に【 -아/어다 주다】 が使われる場面と言うのがあります。
「買って来て」は【 -아/어다 주다】で
まず、「買って来て」と何かを相手に頼む場合。初級の方などは【사고 오다】という表現を使いがちなのですが、会話ではほとんどの場合【사다 주다】で表現します。
편의점에 가는 김에 음료수 사다 주세요.
(コンビニにいくついでに飲み物を買って来てください)
커피 사다 줘.
(コーヒー買って来て)
「持って来てあげる・くれる」は、【갖다 주다】
動詞【가지다】は、「持つ」という意味の動詞です。この動詞には、【갖다】という短縮形もあります。
ところが、厄介なことにこの 【갖다】 には、別の顔もあります。
実は 動詞【가지다】 に 【 -아/어다(가)】をつけた形【가지어다 (가)】の短縮形も 【갖다】 なのです。しかもほとんどの場合この短縮形が使われます。
【가지다】=【갖다】
【가지다】+ 【 -아/어다(가)】 =【가지어다 (가) 】=【갖다】
そして、今回のテーマ【 -아/어다 주다】を【가지다】に つけると【가지어다 주다】となりますが、この場合もやはり短縮形【갖다】が使われ【갖다 주다】と表現します。
【갖다 주다】は、日本語にするなら「持って来てくれる・あげる・もらう」となり、謙譲語にするなら【갖다 드리다】という形で使えます。
숟가락을 좀 갖다 주세요.
(ここにスプーン持って来てください)
물 좀 갖다 줄까요?
(お水を持って来てあげようか)
제가 갖다 드릴게요.
(私が持って来て差し上げます)
お供する系の動詞は【 -아/어다 주다】 がピッタリ
【모시다】(お供する)、【데리다】(連れる)、【바래다】(送る)、【태우다】(乗せる)というお供する系の動詞の場合には【 -아/어다 주다】 を使う場合はほとんどです。
そもそもこれらの動詞には 「場所の移動」 の要素があるので 【 -아/어다 주다】 にピッタリ合うのだと思います。
제가 바래다 주었어요.
(私が送って行ってあげました)
제가 바래다 드렸어요.
(私が送って行って差しあげました)
제가 태워다 주었어요.
(私が乗せて行って or 来てあげました)
제가 모셔다 드렸어요.
(私がお供して差しあげました)
저를 테리다 주세요.
(私を連れて行ってください)
あとがき
いかがでしたでしょうか?
たった【다】1文字あるかないかで意味するところが大きく変わるなんて、ちょっと厄介ですが、これが言語の奥深さ、面白さでもあるような気もします。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。